『これだけは言いたい』  第5回
新しい風が吹き始めた

 
利用者の声は医療者に届く!?

何気なく見ていた新聞に、「乳が
ん術後ケア 患者側から発表 あす開始の学会総会」(2003年6月11日付『朝H新聞』夕刊)という見出しがあった。
 新潟で開かれる日本乳癌学会で、患者団体の人がかつらや下着などの工夫を展示発表するという内容だった。
さらに読むと、こういうことは、日本では珍しいのだそうだ。欧米では、患者から医師に向かって発信するのはきわめて一般的だと書いてある。
それで思い出した。私は今年の初め、国立高崎病院の石田常博院長から直接お電話を頂戴した。
 「俵さん、11月22日の土曜日、空いていらっしゃいますか」
と石田院長はおっしゃった。
 「はい,,空いておりますが……。 何か?」
 「よかった。ぜひ、私たちの学会の市民公開講座に出ていただけませんか?」
学会に出てほしいと言われるのも、"市民公開講座"という名前を聞くのも初めてだった。
その学会は 「日本乳癌検診学会」が、正式名だそうである。
そういう名前の学会なら、私でも、何か一言くらい発言できそうである。
そう考えてお引き受けしたあと、ふと、思った。
 (それにしても、珍しいなあ。学会と名のつくところから、発言を頼まれるなんて…・)

                     ☆☆☆

それから数力月して、冒頭の『朝日新剛の記事を見たのだった。
6年前、私が乳がんの体験を本にまとめたとき、びっくりしたことがある。私は、何はさておきあの本(『癌と私の共同生活』一海竜社刊)を、医療関係の方々に読んでほしいと願っていた。
にもかかわらず、医師で、私に読後の感想をお寄せくださったのは、大阪のX氏ただお1人だった。
そのとき私がわかったことは、
 (そうか。医師とか、看護師は、体験記という種類の本を、お読みにならない方々なのだ)
ということだった.
以来、医師や看護師を念頭に置いて、医療関係の文章を書くのを止めていたのだが、もう1つ、最近驚くことが起こった。
先月号でご紹介した私たちの患者会「1・2の3で温泉に入る会」の体験記を、まとめて200冊も買ってくださる病院が現れたことだ。
お名前を書かせていただくことをお許しいただきたい。私の住む群馬県の社会保険群馬中央総合病院だ。そのお申し出をいただいたとき、思わず私は、石川院長におたずねした。
 「200冊{うれしいけれど、でも、どうしてですか?」
 「地域で連携している医師たちにお配りしたいと思います」
  一ーやはり、世の中、少しずつ変わってきたのではないか。医療に携わる方々が、利用者の声を聞いてみようかという風が吹きはじめている。