『これだけは言いたい』  第8回
[乳房科]というのはいかが?

 
「泌尿器科」「肛門科」「性病科」の表示も一考を

A新聞の記者が、"乳がん検診のあり方"について、ねばり強く取材をしてくれた。おかげで、私たちにも、さまざまな問題点が見えてきた。
久しぶりに、新聞記者らしい、いいお仕事を見せていただいた。
そのなかで、かねがね私もヘンだと思っていたことがクローズアップされていた。それは、専門医の表示の仕方についてである。
これだけ乳がんの患者が多いというのに、町には内科、小児科、産婦人科などと並んで"乳房科"とか"乳腺外科"という看板がない。
大病院に行っても、乳腺科というのはない。私がいま通っている病院も、乳がんの医師は「外科」に属している。
どういう事情で、どういう分類をしているのかは知らないが、これは患者にとって、とても不親切、かつ不便なことではないだろうか。
8年前、私が乳首に湿疹を見つけたとき、まっ先に行こうと思ったのは、皮膚科だった。でも、待てよ……と思った。乳房というのは、女性特有のものだから、ひょっとすると、産婦人科かもしれない。どこへ行っていいのかわからない。あちこち回るのも面倒だから、1年半ほど放っておいた。
やがて、反対側の乳房が炎症を起こした。いよいよ放っておけなくなり、飛び込んだのがホームドクター(内科)のところだ。
 「先生、こういう状況なんですけれど、いったい私はどこへ行って診てもらえばいいんでしょうか?」
ブラウスの前を開けて見てもらった。
 「俵さん。それは乳腺外科の仕事ですよ。僕が紹介状を書きましょう」
と言って渡された封筒の表書きには「X×病院、外科○○先生」と書いてあった。
乳房の病気が、なぜストレートに外科なのか。そのときすでに不審に思っていた。
 やがて、どこの病院に行っても、乳がんは外科の仕事だとわかった。
同時に「乳腺外科」とか「乳房科」という看板をあげることは認められていないというととも知った。
患者の気持ちだけを言えば、はじめから"外科"なんてところに行くのはイヤである。できれば温存してほしい。あるいは乳房再建を含めて治療してほしい。それが、女心というものだ。
"外科"の印象は、バッサバッサと切り落とすイメージである。
だから、日本は、温存率が低いのではないかとカングリたくもなる。
そういう意味では、"乳房科}がいちばん患者の心により添った名前だ。
私だって、町角に「乳房科」なんていう看板がたくさん出ていれぱ、もっと早く、もっと気軽に相談に行ったことだろう。

 いまの医療の専門分類は、いつから、だれが、どういう基準ではじめたことだろうか。そろそろ、しろうとの患者の側に立って、しろうとにわかりやすく、しろうとが行きやすい表示に変えてもいい時期ではないのか。
泌尿器科とか、肛門科とか、性病科というのも、もう一工夫してくれると、行きやすくなるかもしれない。尿洩れCMに、庭のつくばいのかけひが出てくるように……。